監督に暴行、教師を妊娠...ネットでのデマ、中傷に負けず泉正義が野球を続ける理由 (2ページ目)
向かうところ敵なしだった当時を泉が振り返る。
「練習試合では手を抜くんですけど、公式戦になるとスイッチが入るんです。誰かが自分に憑依してくるみたいに。ストレートを外野に飛ばされたら、次の打席では同じコースにストレートを放る。そんなピッチングをしていました」
負けず嫌いの気性は、皮肉にも「アウトロー」のコースにも作用した。泉はこう告白する。
「野球もケンカも負けたくないという気持ちが強すぎて......。何一つ負けたくないので、みけんにシワを寄せて常にケンケンしてました」
たしかにヤンチャなグループの一員として、思春期特有の「やらかし」も多々あった。
だが、インターネット上に流布されている前出の噂は、泉によると「あること『2』の、ないこと『8』」だという。監督を殴った、教師を妊娠させたという現実離れした噂がいまだに出回っているが、泉は「そんなことやったらヤバイでしょう?」と全面否定した。
相手ベンチ前でキャッチボールしたという噂も、真相は違った。ブルペンで投球練習していたところ、金網越しに写真を撮ろうとしたファンから「撮りにくいから奥で投げて」と頼まれ、隣のブルペンに移った話に大きな尾ひれがついてしまったという。
事実ではないことが面白おかしく脚色され、一気に広まってしまう恐怖を感じずにはいられない。泉はなかば呆れるように「たまったもんじゃないですよ」と吐き捨てた。
ただし、名門校の進学がなくなったことは「本当です」と泉は認める。友人が巻き込まれたケンカに、義憤にかられて参加したのがきっかけだった。その時点で「野球をやめようと思った」という。
そんなある日、泉が帰宅すると家の前に大人の男性が立っていた。男性は宇都宮学園(現・文星芸大付)野球部長の星野と名乗り、こう告げた。
「まず、耳のお飾りを外そうか」
「お飾り」とは、泉の耳に光るピアスを指していた。泉がいまだに「職をかけて自分を救ってくれた恩人」と感謝する星野英雄(元・文星芸大付監督)との出会いだった。
「星野先生が何度も足を運んでくれたので、ウガク(宇都宮学園)で野球をやろうと思ったんです」
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