「壊れちゃうんじゃないか」。日本ハム・栗山英樹監督が何度も見た清宮幸太郎の涙 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

── 清宮、野村、万波中正、樋口龍之介もいます。監督がいつもおっしゃっている、チームに眠っている"マグマ"ですね。

「まったく新しいものがいくつも目の前にあるんだから......。10年もやれば監督業ってこういうもんだよねって感じなのかと思いきや、全然、そんなんじゃないんです。今シーズン、ウチって前評判、高くないでしょ。だからこそおもしろいし、ドキドキ、ワクワクする。『しでかしてやるからな、見てろよ』みたいな感じが沸き上がってきます。

 だってローテーションもまったくわからないし、野手のレギュラーにしても、彼らがヤバいと思う選手をつくる楽しさがある。選手を安心させない環境をつくるのは、こっちの誠意なんです。『監督、ムチャクチャするな』『まったく、ウチの監督はしょうがねえな』って思わせるくらいの厳しさがあってこそ、選手が成長するのに必要な環境が整うと思っているし、それこそが彼らに対する恩返しなんです。そうしないとみんな、さらに上へと一気に突き抜けられません」

ハム流育成法。どうやって高卒選手を不動のレギュラーにするのか? >>

── パ・リーグを制するには4年連続日本一のホークスを倒さなければなりません。打倒ホークスへ、今シーズンのファイターズはどんな戦いを挑みますか。

「ホークスの強さは何かというと、絶対的な競争が起こっているところだと思うんです。レギュラーがいつもピリピリしている。これこそがチームをもっとも強くする要因です。そういうレベルにウチのチームを持っていくためには、オマエを蹴落としてやる、と意気込む若手をレギュラーにぶつけるしかない。ウチが築いてきたスカウティングと育成は、ホークスのようにたくさんの選手を獲って激しい競争を起こす形ではなく、違った形で選手が一生懸命になる環境をつくるしかない。育成に関しては絶対に負けてたまるか、という思いはありますからね」

── つまり、何人もの競争の中から勝ち抜く1人をつくるのがホークスの育成なら、レギュラーに対して若い1人をガチンコでぶつけて1対1で競争させるのがファイターズの育成、ということですか。

「ホークスのようにすべてのポジションで激しい競争が起こって、何人もの中から勝ち抜いて出てくるレギュラーは当然、とんでもないレベルの選手です。だったらウチは二遊間のレギュラー2人に、どちらにもプレッシャーをかけられる、セカンドもショートも守れる若手を1人つくる。そうすれば1人で2人に危機感を持たせられるでしょ。そういう形をつくれれば理想的ですけどね」

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