首位打者争い中の落合博満に八重樫幸雄はカマをかけた「何を投げてほしい?」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

【ランナーがいる時の落合の集中力は半端じゃなかった】

――立浪さんにウイークポイントはあったんですか?

八重樫 パワーヒッターじゃないから、「大きいのはない」という安心感はありました。弱点を挙げるとしたら、左ピッチャーの大きいカーブはタイミングを合わせづらかったみたいでしたね。曲がりが小さい変化球なら十分に対応できる、イヤらしいバッターだったけど。

――この連載では何度も触れていますが、八重樫さんの打撃理論は中西太さんの教えの影響を強く受けています。立浪さんの打撃フォームは「中西理論」に当てはめてみると、どのように評価しますか?

八重樫 立浪の下半身の使い方は、中西さんの教えと一緒ですよ。若松(勉)さんもそうだけど、太ももの内側、内転筋をギューッと絞るような形で力を溜めてスイングする。それは同じタイプだと思います。基本の型は変わらず、足の上げ下げで微調整する。コンディションや好不調に合わせて自分で調整できるのは一流バッターの証ですよね。

――1980年代後半から90年代前半にかけての中日打線は落合博満さん、立浪和義さんが並ぶ強力な布陣でした。ヤクルトバッテリーとしてはどのような意識で両者と対戦していたのですか?

八重樫 当然その頃は、落合と比べたら立浪のほうが穴はありました。落合はランナーがいる時ほど慎重になるし、集中力が増すので本当に怖かったんです。クサいボールは絶対に振らない。ファールで粘って、よくてフォアボール、悪くてホームラン。そんなバッターでしたから。一方で若い頃の立浪は、さっき言った「大きなカーブ」もそうだけど、落合ほどの選球眼はなかったな。

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