2020.12.31

首位打者争い中の落合博満に八重樫幸雄はカマをかけた「何を投げてほしい?」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

「オープン球話」連載第47回

【立浪はルーキー当時から欠点がない打者だった】

――前回は中日ドラゴンズ時代の落合博満さんについて伺いました。今回は落合さんと同時代に活躍した立浪和義さんについてお願いします。

八重樫 立浪の場合は、入団早々「すごい新人が入ってきたな」と思いました。ボールをとらえるのはすごくうまかった。ただ、まだ高校を出たばかりで体も細かったし、力強さはなかったかな? だけど、彼の本当にすごいところはPL学園を卒業して入団したばかりの頃と、大ベテランになって引退するまで、ほとんどバッティングフォームが変わらなかった点だと思いますよ。

入団1年目から中日の主力として活躍した立浪 photo by Kyodo News――それは、入団当初から完成されたフォームだったということですか?

八重樫 そうですね。PL学園での教えなのか、自分で努力して身につけたものなのかはわからないけど、僕がマスクをかぶっていた時と引退する時点でほとんど変わっていなかった。強いて言えば、前足(右足)をポンと高く上げたり、タイミングが合わない時にはすり足にしたりする違いはあったけど、スイングの仕方、タイミングの取り方がずっと一定だったのは「さすがだな」と。

―― 一般的には「足を高く上げればパワーが生まれて飛距離が出る」とか、「すり足だとパワーは出ないけど、視線がブレずに確実性が高まる」と言われますけど、立浪さんも、その点を意識していたんですかね?

八重樫 立浪の場合は「タメを作る」という意識だったんじゃないのかな? スイングする時にはどうしても体を絞るというか、キャッチャー方向にねじる必要があるんだけど、左バッターの場合、右肩が入りすぎるといいスイングはできないんです。それに、インサイドのボールが見えなくなってしまうんだよね。

――確かに、自分の右肩がインコースの視界をふさいでしまいますね。

八重樫 でも立浪は、足を高く上げる場合でも、すり足の場合でも、右肩が入りすぎることは全然なかった。下半身もまったくブレない。その点だけ見ても、「入団時からフォームが完成されていた」と言えるんじゃないかな。ヤクルトは岩村(明憲)、山田(哲人)、村上(宗隆)にしても、1年目はファームでじっくり育てたけど、立浪の早熟ぶりは昔も今も際立っていたと思います。