山本浩二と衣笠祥雄が築いた強いカープ。八重樫幸雄はベンチに違いを感じた

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

「オープン球話」連載第45回

【瞬間的に反応できる衣笠祥雄】

――前々回、前回と元広島東洋カープの山本浩二さん、衣笠祥雄さんの思い出を伺ってきました。山本浩二さんの頭に死球を与えてしまった話題が出ましたが、衣笠さんにデッドボールを与えてしまったことはありますか?

八重樫 衣笠さんに対しては何度かありますね。衣笠さんは、インコースのきわどいボールも決して逃げずに向かっていくタイプだったでしょう。内角に厳しいボールを投げられてもまったくひるまない。だから、どうしてもデッドボールが多くなってしまうんですよ。

昭和黄金期のカープを支えた衣笠祥雄(左)と山本浩二(右)昭和黄金期のカープを支えた衣笠祥雄(左)と山本浩二(右)――骨折や頭部死球などはあったんですか?

八重樫 いや、記憶にないなぁ。あれだけ連続試合出場記録を残したのは体が丈夫だったということもあるけど、逃げるのもすごく上手だったからだと思いますよ。ボールに向かっていって、「あっ、当たりそうだ」と思ったら体を反転させたり、よじらせたりして、ボールの勢いを殺しながら当たる。そんな逃げ方が、本当に上手だったから。

――じゃあ、前々回聞いた浩二さんへの頭部死球は、余計に忘れられない苦い思い出となりましたね。

八重樫 浩二さんだってあれだけの大打者なんだから、ボールをよける技術だって卓越していたはずなんです。でも、頭の中に「次は変化球だろう」という思いがあると、どうしてもよけるのが遅くなっちゃうんですよ。僕の感覚では「60%の確率で変化球だ」と考えるだけで、反応が遅くなってしまう感じ。特に浩二さんの場合は、手元までグッと引きつけて最後までボールを見るタイプだったから、なおさらなんですよね。

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