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宮西尚生の偉業を支えた常識破りの投球術。
「使えねぇな」から屈指のリリーフへ (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 寺崎江月●協力 cooperation by Terasaki Egetsu

 さらに、マウンド上における時間の使い方にも宮西の真髄が詰まっている。野球は「間合いのスポーツ」とも言われるが、宮西は「投球の"間"をいかに使うか、どれだけ間延びさせられるかをいつも考えている」と話す。

 マウンドに上がったら、ひとつひとつの動きをゆっくりと時間をかけて行なう。相手打者に「早く投げて来い」「間が長い......」と思わせ、宮西のペースに巻き込んで勝負を仕掛ける。また、相手チームに勢いがあると感じた時は、特にたっぷり時間を使って"間延び"させてゲームを進めていく。

「先発投手にはリズムを大切に投げるタイプも多く、試合の流れを作り、味方の野手を乗せることも大事になるでしょう。でも、僕はリリーフです。マウンドに上がるのは試合終盤で、失敗は許されない。テンポよく投げて打たれたら何もなりません。

 リスクを最大限下げるため、投球間隔をギリギリまで使って投げるようにしています。ベテランの方々にバックで守ってもらっていた時から、『すみません、僕の時は長くなります』と事前に伝えていました」

 投手コーチにも投球間隔を長くすることの意図を伝え、少しでもチーム内のストレスを少なくするように考えてきたという。

 野球には、投手は捕手から球を受け、プレートを踏んだところから15秒以内に次の球を投げなければならない「15秒ルール」がある。近年は、投球間隔の短い投手が「スピードアップ賞」として表彰されるような流れがある(打者部門もあり)。しかし宮西は、「僕は時短の流れに完全に逆行した投手ですね」と自嘲(じちょう)気味に口にしたあと、こう続けた。

「任されたところで抑えるのが僕の仕事。ルールの中で定められた時間を目一杯使って、とにかく抑える。ここは譲れません」

 リリースポイントを意図的にずらし、間延びをいとわない投球。"北の鉄腕"が語った極意は、球界の常識に抗いながら生き抜いてきた13年を象徴するものだった。

(後編につづく)

■宮西尚生 初の著書
『つなぎ続ける心と力 リリーフの技&受け継ぐ魂のバイブル』(廣済堂出版)
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