「ダルビッシュ2世」ブームは下火。
全国各地にいた選手たちのその後
アマチュア野球の試合後、ドラフト候補の囲み取材になると記者の誰かが必ず聞く質問がある。
「目標にしている選手はいますか?」
だいたいの選手はプロ野球のスター選手の名前を挙げるが、時には「目標とする選手はいません」と答える気骨のある選手もいる。目標にするのではなく、される選手になりたい。前例にならうのではなく、唯一無二の先駆者でありたい。それが超一流を目指すアスリートのマインドセットというものではないだろうか。かつて「下町のダルビッシュ」と呼ばれていた元ソフトバンクの吉本祥二 そんな選手の心情とは裏腹に、メディア側は前例になぞらえて「●●2世」などと書き立てる。
一時、雨後の筍のごとく乱立したのが「ダルビッシュ2世」である。ダルビッシュ有(カブス)という偉大な投手をモデルに、大型右腕の好素材を何でもかんでも「●●のダルビッシュ」とつけて呼ぶブームがあったのだ。
そもそも、あの大谷翔平(エンゼルス)だって、花巻東時代は「みちのくのダルビッシュ」と呼ばれ、藤浪晋太郎(阪神)は大阪桐蔭時代に「浪速のダルビッシュ」と呼ばれていた。
大谷、藤浪が高校2年生だった2011年は1学年上に「九州のダルビッシュ」こと武田翔太(宮崎日大→ソフトバンク)もおり、全国各地で「ダルビッシュ2世」が乱立したピーク時だった。おもな投手を紹介してみよう。
「下町のダルビッシュ」吉本祥二(足立学園→ソフトバンク)
「静岡のダルビッシュ(ノムビッシュ)」野村亮介(静清→三菱日立パワーシステムズ横浜→中日)
「三重のダルビッシュ」山崎正衛(近大高専→西濃運輸)
「上州のダルビッシュ」金井和衛(高崎商→法政大)
「琉球のダルビッシュ」佐村トラヴィス幹久(浦添商→DeNA→阪神)
吉本は現在、ソフトバンク本社に勤務しており、野村は中日の球団職員(打撃投手)になるなど、上記に挙げた投手たちはすべて現役を引退している。
全員に共通していたのは、身長190センチ前後の高身長で、将来性の高いドラフト候補だったということだ。
さらに1年後には、大谷、藤浪と同学年の「房総のダルビッシュ」こと相内誠(千葉国際→西武)が台頭してくる。
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