ヤクルト清水昇が失敗を糧に急成長。プロ初勝利にこだわらない理由とは (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 ドラフト1位であることや、同期入団選手の活躍が与えた影響について聞くと、「いい刺激になりつつも......」と言って、こう続けた。

「それが焦りになったり、気持ちにぶれが生じたり、そういう部分はあったかもしれません。あと初登板が、チームが負けたら16連敗になるという試合で『そんな大事な試合に自分が先発でいいのかな』と、マイナスのイメージを持ってマウンドに上がってしまったんです」

 昨年の6月1日のDeNA戦(横浜スタジアム)。清水は4回5失点で敗戦投手となり、16連敗はセ・リーグのワーストタイ記録となった。

「そのあと、野球だけでなく、ほかのスポーツの人やメンタルトレーニングの人など、いろいろな人に話をうかがったんです」

 相談した人たちからは「どういう心理状態だったのか」と聞かれ、清水は「抑えられるか不安でした」と答えたという。

「教えてもらったのは『自分が連敗を止めるんだとプラスに考えなければ、1年目のプレッシャーもあるし、相手に太刀打ちできないよ』ということでした。なので、今年は気持ちの面でもプラスに考えてやっていこうと思っています」

 キャンプ中のブルペンでは、新任の斎藤隆投手コーチの「ナイスボール! でも、それ以上求めるなよ。ボトムを上げていこう」という言葉が、何度も若手投手陣に投げかけられた。斎藤コーチはアドバイスの意味について、こう説明してくれた。

「その投手のいいボールを10とした場合、どうしても4か5のボールもあるんです。そういう状況で10ばかりを求めると、どうしても力んでしまったり、タイミングが合わなかったり、悪いボールになってしまいます。そうした状況でも常に8や9のボールを投げられるようにしようということです」

 清水は、自分の思っている体の動きと、斎藤コーチの言う言葉のポイントが「すごく合っている」と言った。

「斎藤コーチのちょっとしたささやきとか、擬音がスッと耳に入ってくるんです。そういうときは、『あっ、この感覚!』といいボールが続くのですが、10球、20球と重ねていくと、『もっといいボールを投げてやろう』とか、『今のボールはシュート回転したかな』とか考えはじめてしまい、ちょっとしたズレが生じるんです。もちろん、投げる前はしっかり考えますが、マウンドに上がり、足を上げてからは何も考えない。今年はそういう気持ちでマウンドに立ちたいと思っています」

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