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斎藤佑樹がスマホに永久保存。
大石達也とのラスト・キャッチボール (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 細野晋司●写真 photo by Hosono Shinji

「大石は感覚派なんです。プロに入ってからは年に2、3度、食事に行くんですけど、そういうとき、『投球フォーム、見せてよ』って言うじゃないですか。それは今、ここで投げてくれって意味じゃなくて(笑)、スマホに入ってるでしょ、自分のピッチングフォームが......でも大石はそういう動画を一個も持っていない。やっと見つけたと思ったら、軽ーいキャッチボールとかで、これじゃ、全然、わかんないよって。大石は『オレは感覚でやっている人間だから、それでいいんだ』って言っていました。そういう考え方ができるのって、羨ましいんです。大石みたいにシンプルに考えられれば頭の中がクリアになるのに、僕はいつも頭の中が忙しくて、頭のキャパがいっぱいになっているタイプですからね」

 感覚に頼ってきた大石は、プロの世界でフォームを狂わせたとき、ロジックに頼ることができなかった。テイクバックのとき、あるはずのない位置に腕がある。ここじゃないと元に戻そうとしても、簡単に戻るものではない。あれこれ試行錯誤を続けているうちに、大学時代に投げていたフォームがわからなくなってしまった。

 逆に理詰めで物事を考える斎藤は、プロ入り後もいろんな考え方に興味を抱き、さまざまなアプローチによって、フォームのことや身体のことを研究し尽くしてきた。こうすべきだ、ああしようと正解を追い求めているうちに、本来、持っていた本能に近い感覚がぼやけてしまったのかもしれないと、斎藤が話していたことがある。

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