ブライアントがアンビリーバブルな一発。西武に連勝→近鉄を逆転Vに導いた
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日本プロ野球「我が心の最良助っ人」
第7回 ラルフ・ブライアント(近鉄)
たった1球、たった1本のヒットで運命が変わるプロ野球。勝負師である選手たちはグラウンドで極力、表情を変えないように自分を律している。例えばピッチャーが打者を打ちとった(もしくは打たれた)としても、すぐにまた戦う機会が巡ってくるからだ。
しかしあの時、マウンドに膝をついたピッチャーの顔には、はっきりと「や・ら・れ・た」と書いてあった。被害者は、西武ライオンズの渡辺久信。ホームランをぶち込んだのは、近鉄バファローズのラルフ・ブライアントだった。
1989年10月の西武とのダブルヘッダーで、4本塁打を放ったブライアント 1988年シーズンの途中で中日ドラゴンズから移籍した左の長距離砲は、その場面をこう振り返っている。
「あのシーンは絶対に忘れられないよ。自分でもアンビリーバブル! ずっと抑えられていた渡辺からホームランを打てたんだから。とにかくうれしかった。彼がマウンドで膝をついた瞬間、『最高だな! 世界で一番の瞬間だ』と思ったね。野球人生で、いや人生で忘れられないシーンだよ。彼の表情もよく覚えている。悔しかっただろうね」
1989年のパ・リーグは、4年連続日本一を狙う西武が有利と見られていた。しかし、4月終了時点で首位に立っていたのは、阪急ブレーブスから球団名もユニフォームも変えてスタートを切ったオリックス・ブレーブス。6月終了時点では2位・近鉄に8.5ゲーム差をつけていたが、近鉄と西武が巻き返し、10月には三つ巴の争いになった。
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