松坂世代の独立リーグ監督はコロナで大打撃。励みは「ヒーロー」の活躍 (4ページ目)

  • 広尾晃●文 text by Hiroo Koh
  • photo by Hiroo Koh

 大西は現役時代から、常に"その先"のことを考えていた。

「現役時代から若い選手に『野球だけがすべてじゃないで。すべてやと思ったら、あとがないと思って数少ないチャンスで緊張してしまう。失敗しても死ぬわけではないし』と言っていました」

 プロ野球選手のセカンドキャリア問題は年々大きくなっているが、大西のこの言葉には実感がこもっている。

 以前、2018年11月に開催された堺シュライクスのトライアウトも取材している。この時、大西は選手たちを前にこう言った。

「このなかには、このトライアウトを最後に、野球をあきらめようと思っている人もいるかもしれない。野球をするのは今日が最後と思っている人は、ここで僕たちと堺シュライクスのテストを受けたことをいい思い出にして、これから頑張ってほしい。

 また、落ちても野球を続けてようと思っている人もいると思う。僕たちも人間だから、トライアウトでいいところを見抜けなかった可能性もある。そういう人たちは、これから僕たちを見返すような活躍をしてほしい」

 これもプロ野球という世界で酸いも甘いも経験した大西ならではの言葉だったと、今にして思う。

 試合中、ベンチに座っている大西はプロで活躍してきた野球人らしく、存在感がある。しかし、選手にアドバイスを送る時は、決して上から目線にならず、わかりやすく諄々(じゅんじゅん)と話をしている。こうした姿を見るたび、元プロ野球選手として、そして経営者として、キャリアを積み重ねた奥行きのある深い人間性を感じる。

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