千賀、甲斐は三軍から大化け。大道典良が明かすホークス育成法の秘密 (5ページ目)

  • 岡田真理●構成 text by Okada Mari
  • 寺崎江月●取材協力 cooperation by Terasaki Egetsu

 当時から甲斐は「人はヒト」と帽子のつばの裏にペンで書き入れていた。これは新人時代に森浩之二軍バッテリーコーチ(現ホークス一軍ヘッドコーチ)から掛けられた言葉らしい。おそらくその「人」とは山下のことだろう。同い年で、スポットライトを浴びて入団した同じポジションの選手を意識しないはずがない。

 このふたりの成長具合は実に対照的で、的山哲也二軍バッテリーコーチの言葉を借りれば「まるでイソップ童話の『ウサギとカメ』」。山下は成長が早かったが、甲斐はカメのようにゆっくりゆっくり歩を進めていた。

 そんな中で甲斐がブレイクしたのは2017年。シーズン中にはスタメン先発出場も果たし、プロ初本塁打も記録。これまでを大幅に上回る103試合に出場し、多くの若手投手の女房役を務めて経験値を上げた。クライマックスシリーズや日本シリーズでも先発するなど目覚ましい活躍を見せ、育成出身捕手初となるゴールデングラブまで受賞した。

 2018年は公式戦133試合に出場。クライマックスシリーズでは、盗塁王だった北海道日本ハムファイターズの西川遥輝を盗塁や牽制で刺したり、12球団最多盗塁数を誇っていた埼玉西武ライオンズにひとつも盗塁をさせなかったりと、日本シリーズ進出に大きく貢献した。

 その年の盗塁阻止率は12球団の捕手で唯一の4割超え。二塁送球は、平均1.83秒、最速で1.71秒。「甲斐キャノン」の文字がスポーツ紙を賑わすようになった。2019年からは正捕手を務め、133試合で先発マスクを被った。ゴールデングラブも3年連続受賞となり、侍ジャパン日本代表としてプレミア12にも出場。時間はかかったが、ウサギとのレースにカメが勝ったと言えるだろう。

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