ホークスの160キロ左腕がブレイクか。工藤監督の金言で制球難を克服 (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 そして、工藤公康監督からも金言を授かった。

 ときに自ら手本を示し、身振り手振り古谷にアドバイスを送った。すると、古谷の投球動作は同じ投手と思えないほど見違えた。上半身の無駄な力が抜け、右半身の開きが一瞬我慢できるようになった。そのドンピシャのタイミングで投げることができた時の真っすぐは、まさしく一級品だった。ボールの威力も回転もすばらしく、捕手のミットへズドンと吸い込まれていった。

「もともと上半身に力が入りすぎていて、工藤監督からボールを離す時に指で押し出すような使い方をしていると指摘されました。そうではなく『叩け』と。また『いい投げ方をしていれば、コントロールは自然と身につく。今はバランスよく投げることが大切だよ』とも言われました」

 自分は何を目指すべきか、その方向性を定めることができた。そうなれば、迷いなどは完全に消えてくれる。

 そのキャンプ後に参加した台湾でのアジアウインターベースボールリーグで、古谷は5試合に登板(4試合に先発)して1勝0敗、防御率1.37と好投した。

 そして迎えた2020年。2月の宮崎春季キャンプでは自身初のA組(一軍)に抜擢された。キャンプ3日目のフリー打撃で152キロを投げ、シート打撃では打者9人に対し無安打、5奪三振と封じた。さらに紅白戦では、2回を打者6人で抑えるパーフェクト投球。今季のブレイク候補最右翼として、各メディアに大きく報じられた。

 だが、やっぱり人生は甘くなかった。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る