元ホークス吉村裕基はオランダ→沖縄へ。NPB131本塁打の男が選んだ道 (5ページ目)

  • 広尾晃●文 text by Hiroo Koh
  • photo by Hiroo Koh

「去年の夏も、現役続行の気持ちがあったのでひとりで練習を続けていました。そこへ琉球ブルーオーシャンズからの話があって、元DeNAの小林太志さんが社長を務められると聞いて、入団させていただくことにしました。本当に実現するのか、チームはどこを目指しているのかといったことも確認しないと、という気持ちもあったのですが、コーチじゃなく選手として声をかけてくれたことは、素直にうれしかったです。

 選手として若い仲間と一緒にやっていると、同じレベルでアドバイスできる。これっていいなあと思います。コーチじゃないから自分から言うことはないけど、聞かれたらアドバイスする。僕はこれまでベテラン選手の声に何度も救われてきたので、そういう存在になれたらいいなと思っています。チームには、元NPBの選手だけじゃなく、大学、社会人などからやってきた若い選手がいます。いろんな失敗をしながら、感覚を磨いていってほしいですね」

 新しいチームでの毎日は新鮮だ。

「このチームの面白いところは"ゼロからのスタート"だということですね。船が砂浜から進水するみたいな感じです。いくらいい船でも、みんなで押していかないと進水できない。また、沖縄に新球団がなぜできたのか、ということについても考えました。バスケットの琉球ゴールデンキングの試合を見て、すごい熱気を感じました。『みんなで何かやってやろう』という気持ちが伝わってくる。沖縄という地に可能性を感じましたし、僕たちもこの沖縄でいいプレーを見せたい。2月はNPBのいくつかのチームが沖縄でキャンプをしていましたが、これからは僕たちが子どもたちにとって憧れる存在になってみせる。そういう気持ちです」

 現在35歳の吉村は、まだ"何か"を求めて冒険を続けている。それは野球選手としてもうひと花咲かせようとしているのか、それともケジメをつける場所を探しているのか......。沖縄という地にその答えがあるかどうかはわからない。しかし、吉村の野球に対する思いは、ブルーオーシャンのように澄んでいた。

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