ラミレスに「へその前で打つ」練習を徹底。八重樫幸雄が打撃覚醒に導いた (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――「へその前で打つ」というのは、ラミレス選手にとっても初めての経験だったと思います。この練習を彼はスムーズに受け入れてくれたのですか?

八重樫 その点はスムーズでしたよ。事前に「お前の実力があればインコースを打つのは問題ない。ただ、このままではいつまでたってもアウトコースのボールは打てないぞ。へその前で打つ感覚を身につければ、"あっち向いてホイ"でもライトにホームランを打てるんだぞ」ということは、最初に丁寧に説明しましたね。ラミちゃんは真剣に聞いていたし、素直に受け入れてくれたと思います。

――懇々と諭すような感じなんですか? それとも、フランクに伝える感じなんですか?

八重樫 「懇々と」というわけじゃないけど、じっくりと説明はしましたよ。「日本のピッチャーはお前のことをストライクゾーンで仕留めようとはしない。相手バッテリーはボール球を振らそうと考えている」と何度も伝えたし、「お前は詰まってもライトにホームランが打てるんだ」っていうことも何度も話しました。

――実際にどれぐらいで効果が出始めたんですか?

八重樫 練習を始めてから1カ月ぐらいしてからかな? ある日の試合でアウトコースのスライダーをパッと見逃したんですよ。それまでだったら、絶対に手を出して空振りしていたボールをきちんと見逃すことができた。ベンチで見ていて、「あっ、ようやくつかんだのかな?」って感じたことを覚えています。で、実際にそれ以降少しずつ結果が出始めていったんだよね。実際に結果が出始めたことで、ラミちゃん自身も「これだけ詰まってもホームランになるんだ」って理解するようになったんじゃないのかな?

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