日本ハムのオールド育成選手は野球漬けで「幸せ」だけど「嫌になる」

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 沖縄・国頭村(くにがみそん)にある、かいぎんスタジアムでの日本ハム二軍キャンプの練習中、見守っていた大渕隆スカウト部長がこんなことをつぶやいた。

「育成選手が入ったことで、練習に活気が出てきましたよ。前まではポジションがスカスカのまま練習することもありましたから」

 日本ハムは長らく育成選手制度を利用せず、支配下登録の人数も65人程度に絞る「少数精鋭」の体制をとっていた。ファームで実戦経験を多く積ませるための適正人数が65人と判断していたためで、資金力に恵まれているわけではない日本ハムにとって「ドラフト」と「育成」の両輪は命綱だった。

BCリーグの新潟アルビレックスから育成選手として入団した長谷川凌汰BCリーグの新潟アルビレックスから育成選手として入団した長谷川凌汰 だが、近年はファームの試合数も増え、故障者が続出すると運営に支障をきたすリスクもあった。また、春季キャンプでは40名以上の選手が一軍に招集されるため、二軍は人数不足のなか練習せざるを得ない弊害もあった。

 そこで2018年ドラフトで初めて育成選手の海老原一佳(富山GRNサンダーバーズ)を獲得。2019年ドラフトでは、育成選手3人を指名した。

 スカウト歴40年を超える大ベテラン・今成泰章スカウトは言う。

「ファームで出番を与えられるだけじゃうまくならないし、競争意識が出てきたよ。育成の子らも懸命にやるからね」

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