松井裕樹が絶不調のなかで見つけたもの。先発転向の伏線は2年前 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Taguchi Genki

 それでも松井は「長く野球を続けていくために必要なこと」と、先発に挑戦する狙いを語る。

 じつは、その伏線は2018年にある。この年、松井は苦しみ、もがいていた。体を絞ろうと食事制限に取り組むも思うような成果が得られず、この年から始めたワインドアップモーションも馴染まなかった。

「きつかった......」

 そううなだれるほど絶不調だった松井が復調のきっかけをつかんだのは、この年のラスト2試合で任された先発マウンドだった。

"力投型"と自認する男が、力を入れずともストレートは140キロ代中盤を計時した。その2試合で計11イニングを投げ、21奪三振。余力を残しながらもハイパフォーマンスを発揮できた要因を探ると、下半身の使い方がポイントになるという答えを導き出した。

 とくに大事にしたのは、踏み出す右足の使い方だった。リラックスさせながら足を上げて重心を移動させると、「優しく下ろす」イメージで足を着地させ、ボールをリリースすると同時に右ひざを伸ばす。このように下半身を滑らかに使うことで、腕の力だけに頼らず、質のいいボールを投げられることを実感したのだ。

 かつて松井はフォーム修正の重要性を、このように力説していた。

「いつまでも力投型ではやっていけないので......。それができなくなった時に困らないように、効率のいいフォームを使っていかないといけない」

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