楽天・石橋良太がシュートでサプライズ。支配下→育成→支配下でも生き残る (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 ロング、ワンポイントをこなせる貴重な中継ぎとして定着したが、突然5月に、先発へ配置転換となった。右ひじの手術でリハビリ中の則本昂大、開幕戦で左足を負傷した岸孝之ら、先発陣が次々と離脱し、その代役として石橋に白羽の矢が立った。

 突然の先発転向にもかかわらず、ローテーションを守り続けることができたのは、昨年の二軍での経験があったからだと、石橋は自認する。なにより大きかったのは、平石監督の檄(げき)だった。

「あんまり長いイニングを投げようと考えるな。1イニング、1イニングをしっかり投げていけばいいんだからな」

 先輩である辛島航からは、気負わずに投げることの大切さを教わった。

「自分の結果がどうこうじゃなく、チームが勝てばいいんだから」

 3年ぶりの一軍は、すべての人の言葉が糧となり、励みになった。

「中継ぎでも先発でも、『最低限、粘る』ことしか考えていませんでした。先発になってからは『ずっとゼロで抑えるなんて無理やし、できへん』って(笑)。チームがリードしていれば、失点しても追いつかれないように。そこだけでしたね、意識していたのは」

 背水の陣で挑んだ2019年。石橋は周囲の予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せ、チームの3位に大きく貢献した。4位・ロッテとのゲーム差が2だったことからも、石橋が挙げた8勝がいかに大きかったかがわかる。

 先発の窮状を救い、クライマックス・シリーズ進出にも貢献するなど、楽天の救世主となった。それでも石橋は浮かれることなく、表情を引き締める。

「なんていうんですかね、自分をまだ評価できていないっていうか......1年間、一軍に居続けるという目標を立てて頑張ってきたので、それができたことはよかった」

 石橋が言っていた「支配下で入って、育成になって、また支配下に。でも、そこで活躍する選手っていないじゃないですか」という不安を、自らの力で覆した。そして石橋は、こう力強く語る。

「来年も生き残る! それだけです」

 この志こそ、石橋が活躍するための最大のエネルギーなのである。

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