2019.12.13

立浪和義を殿堂入りに導いた打撃理論。
その原点は中学時代にあった

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

「僕は、体が小さいですから、根性と気迫では誰にも負けないような選手になりたいと思っています」

 今から約30年前の12月16日、PL学園からドラフト1位で中日に指名された立浪和義は、入団会見の席でこう決意を口にした。その言葉を横で聞いていた当時40歳の闘将・星野仙一が、力を込めてこう言い放った。

「男の大小っていうのはね、体が大きいとか小さいじゃなくて、肝っ玉で決まると僕は思っています」

 立浪の身長は公称173センチだが、実際に会うともう少し低い印象を受けた。いずれにしても、その小さい体で猛者たちが集うプロの世界で22年間プレーし、歴代11位の2480安打、日本記録となる487本の二塁打を放った。また、遊撃手、二塁手、三塁手で計5度のゴールデン・グラブ賞も獲得するなど、攻守でチームを引っ張り、今年、晴れて野球殿堂入りとなった。

22年の現役生活で歴代11位の2480安打を放った立浪和義 現役引退直後、立浪に打撃理論について聞いたことがある。立浪のバッティングと言えば、軸足にしっかりと体重を残し、体を駒のように鋭く回転させるスイングが真っ先に浮かぶ。

 打撃のルーツについて聞くと、「とにかく遠くに飛ばしたくて、子どもの頃は王(貞治)さんのようなホームランバッターになりたかったんです」と言った。立浪の口から王貞治の名前が出ることは少し意外だったが、”世界のホームラン王”への憧れがスタートだったから、バッティングは小さくならず、あのスイング、あの打球が実現したのだろう。

「中学、高校時代は完全に引っ張り専門でした。プロに入って、変化球に対応するために逆方向の打球も出てきましたけど、昔は引っかけた当たりのセカンドゴロばかり。でも、とらえた時の打球はホントよく飛びました」

 フォームで強く意識していたことを聞くと、「余分な動きをしないこと。そのためには、トップの位置から、ボールに対してバットを一直線に出すことを考えていました」と言った。

 バットがアウトサイドから入ってくると、ボールとの接点が1カ所となり、ミートの確率が下がる。また、バットのヘッドも下がってしまうと、力のあるボールに負けてしまい、打球が飛ばない。