2019.11.26

名コーチがプレミア12で分析。
国際大会で打てる選手と打てない選手

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Getty Images

 第2回プレミア12で、稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンは優勝を飾った。甲斐野央(ソフトバンク)、山本由伸(オリックス)を筆頭に、投手陣は新戦力が台頭し、東京五輪に大きな期待を抱かせた。その一方で、野手陣は課題の残る大会になった。なぜ日本の打者は国際大会で苦戦するのか。近鉄、ヤクルトなどで名打撃コーチとして名を馳せた伊勢孝夫氏に聞いた。

打率.444、3本塁打、13打点の好成績を残し大会MVPに輝いた鈴木誠也 今回のプレミア12を見て強く印象に残った選手は、鈴木誠也だった。技術的に言うと、テイクバックに入った時、ほとんど軸がぶれない。あれならどんな外国人の動く球にも対応し、しっかり捉えられるはずだ。

 聞くところによれば、大会前までシーズンの疲れが残っており、本来のスイングができなかったらしい。それでも無理に修正することなく、今できるスイングで対応し、1球に集中するという考え方で乗り切ったそうだ。

 普通なら、体に染み込んだスイングというものがあり、それが違っていたらなんとか戻そうと躍起になるもの。しかし、スイングというものは簡単に修正できるものではない。投手はちょっとした意識の変化でフォームを修正することができるが、打者は受け身のため容易ではない。投手が投げるボールに対応するためのフォームとなると、最低でも2週間程度、普通なら1カ月はかかる。

 つまり鈴木は、本来とは違うスイングながらも開き直りと集中力で試合に臨み、そして好結果を残した。あらためて立派な打者になったと思う。

 もし私が代表のコーチをしていて、選手のスイングの崩れを発見したとしても、おそらく指摘することはないだろう。なぜなら、先程も言ったようにスイングを元に戻すのは短期間ではできない。下手にアドバイスをすると、選手が混乱してしまうおそれがある。それよりも選手を持ち上げて、気持ちよくプレーさせることを、私なら最優先する。

 毎日のように相手チームが変わり、しかもアメリカ、中南米、アジアなど、国によってピッチャーのスタイルはまるで違う。そうした投手らに対応するには、応急処置でどうこうなるとは思えない。このような国際試合は内容よりも結果であり、最終的には気持ちの部分が大きいと思う。