川崎憲次郎がどん底からMVP。日本シリーズ2連勝で「西武を超えた」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

【突然決まった、第7戦の先発】

――飯田さんのスーパープレーによって、第4戦を1-0で勝利したスワローズは3勝1敗と王手をかけたものの、ライオンズが粘って3勝3敗と逆王手をかけます。雌雄を決する第7戦の先発マウンドを託されたのが、川崎さんでした。

川崎 もともと、第7戦の先発は初戦で勝ち投手になっていた荒木(大輔)さんの予定だったんです。だから、「スクランブル登板に備えよう」という思いはあったけど、「たぶん、自分の出番はないな」と思っていました。でも、雨天順延になりましたよね?

――確かに、10月30日に予定されていた第6戦が雨天順延となりましたね。野村監督は、これを「恵みの雨だった」と言っていました。なぜなら、「これで川崎を中4日で使えるから」とのことでした。

川崎 雨天中止が決まった時に、第7戦の先発を告げられました。そもそも登板予定だった荒木さんは、「荒木さんが投げれば負けない」っていうピッチャーだったんですよね。でも、実績の劣る僕が指名された。「まさか自分が......」という思いだったことは覚えています。2月1日のキャンプ初日から、「リーグ連覇だ。日本一だ」と目標にしてきた最後の最後で、オレですよ。ものすごいプレッシャーでしたよ。

――プレッシャーを感じながらの第7戦。いきなり1回表に広沢克己(現・広澤克実)選手の先制3ランホームランが飛び出しました。これは素直にうれしいものなのですか、それとも逆にプレッシャーとなるものなのですか?

川崎 プレッシャーですね。初回に大量点をもらうと、どうしても守りに入ってしまうんですよ。それで、いきなり先頭の辻(発彦)さんにフォアボールを与えてしまいましたから(笑)。

映像を見ながら当時を振り返る川崎氏 photo by Hasegawa Shoichi映像を見ながら当時を振り返る川崎氏 photo by Hasegawa Shoichi――そして、ツーアウト二塁の場面で、四番・清原和博選手を迎えました。

川崎 インコースには投げ切ったんですけど、清原さんはインローがすごく強いし、絶対に投げちゃいけないところに投げてしまったんですよ。結果的に2ランホームランとなってしまったけど、逆に打たれてようやく落ち着いた部分も、正直ありましたね。

――第4戦の先発では「緊張しなかった」とおっしゃっていましたが、やはりこの第7戦は緊張の極致にあったんですね。

川崎 試合前にノムさん(野村克也監督)に呼ばれたんですよ。「お前、緊張してんのか?」って聞かれたので、「はい」って言ったら、「結果は気にするな、自分のピッチングをしてこい」って言われて少しは落ち着いたけど、やっぱり緊張はありました。でも、3-0のまま試合が続くよりは、3-2で、1点しかリードがない状態の方が、いい緊張感を持続できた気がします。初回の2失点は余計だったのかもしれないけど、2回以降は、逆に落ち着いて投げられました。

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