楽天の台湾プロ野球・ラミゴ買収であらためて思い出したい先人の言葉
台湾にラミゴ・モンキーズというプロ野球球団がある。2006年の初優勝から過去6回、年度優勝を果たし、今シーズンから日本ハムでプレーしている王柏融(ワン・ポーロン)の古巣でもある。ファン開拓にも精力的で、ビジネス面でも評価を高めるなど、いわば台湾プロ野球の成功モデルとも言える球団だ。そのラミゴが身売りしたのだ。
今年9月、楽天が台湾プロ野球のラミゴを買収したと発表された 台湾の野球ファン人口は、日本でイメージされているほど多くない。昨シーズンの1試合の平均観客動員数は約5600人。スタジアムのキャパや、外野席のない球場もあることを考慮しても、けっして多いとは言えない。
当然、観客が少ないため、グッズや売店の売り上げも大きな期待はできない。放映権もしかりだ。そのため、どの球団も赤字続きで、親会社に頼って成立しているのが実情だ。台湾の球界関係者が言う。
「1年間の運営費は、およそ2億台湾ドル(約7億円)。それでも毎年の赤字は1億台湾ドル(約3億5000万円)にものぼります。1990年のプロ発足時から球団を持ち続けている"統一企業"は、セブンイレブンのような大企業ですが、以前、球団幹部が『球団を買ってくれる会社があればいつも譲る』と公言して、球界関係者たちを嘆かせました。とはいえ、プロ野球のチーム経営は赤字を出すだけ。残念ながら、これは歴然とした事実なんです」
ましてラミゴの親会社は靴の製造メーカーで、体力的に他の企業と比べて乏しい。とはいえ、小規模だからこそ柔軟な運営を試みることができた。たとえば、スタンドの全面的なフランチャイズ化だ。
台湾プロ野球の場合、一般的にホームチームの応援は一塁側で、ビジターは三塁側と決まっていたが、ラミゴの本拠地である桃園国際野球場は、一、三塁側の隔てなく内野席はすべてホームの応援にあてられ、ビジターの応援は外野になった。これはファンならずとも画期的なことだった。
また、これまでは試合に花を添えるだけだった球団チアリーダーも、ラミゴはイベントを多く企画し、野球だけを見に来るファン以外の拡販にも力を注いできた。
それでも、限界はあった。
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