2019.09.29

引退覚悟の筒香嘉智に大村巌が助言
「自分の好きなようにやればいい」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Koike Yoshihiro

【連載】チームを変えるコーチの言葉~大村巌(3)

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 投手から野手に転向した糸井嘉男(現・阪神)を1カ月でファームの試合に出られる状態にする──。現役引退後、日本ハムで初めてコーチになった途端に難題を突きつけられた大村巌は、専用カリキュラムを組んで完全マンツーマン指導。

 同時に糸井の両親の人柄にまで遡って人間性を深く理解し、信頼関係を築くことで緊急指導を完了させた。この経験が今につながる原点だそうだが、当初は2年かかると予測したことが、なぜ1カ月でできたのか。現在、ロッテで打撃コーチを務める大村に聞く。

今や押しも押されもせぬ球界を代表する強打者となったDeNA筒香嘉智「まず何より、糸井の吸収力がすごかった、ということです。言われたこと、やってみせたことを吸い込むようにして、すぐ覚えちゃう。とにかく早い。その代わり、アマチュア時代にバッティングの経験があっても、プロのバッターは初めてですから、先が見えない不安がある。じゃあ、不安を取り除こうと。1カ月後に二軍の試合に出るという目標、自分がどんなバッターになりたいかという目標、この2つをはっきりさせたんです」

 目標を明確にして、進むべき道を示す。悠長に構えて試行錯誤を繰り返す時間はなかったからこそ、自ずと方向性が定まる部分もあった。そのうえで、目標を達成するために必要な練習内容と方法をはっきり打ち合わせしておいた。こうして、コーチングにおいていちばん大事な、選手とコーチが同じ目標に向かうことができたのが大きかった。

「当然ながら、誰もが糸井のようにうまくいくわけではありません。道を示しても迷います。迷ったら『ここを目指しているから、今はこうなんだ』と説明する。ロッテでもそうですけど、今の選手は説明しないと動かないですから。1回、1回、何のためにやっているのか。これとそれをこのぐらいの期間やったらこうなる、って説明しないと動かない。なぜかというと、ものすごい情報量があるからなんです。だって、バッティングなんて動画サイトですぐ見られますから」