2019.10.01

鬼コーチ・宮本慎也の心残り。
「1人前にできなかった選手がいる」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 今シーズン限りでの退団を発表したヤクルトの宮本慎也ヘッドコーチは、この2年間、とくに若手選手たちと濃密な時間を過ごした。秋の松山キャンプ、春の浦添キャンプ、さらにシーズン中の”チーム早出練習”では計26人の選手と汗を流し、試合後はベンチ裏の素振りも見守った。

「僕のなかでは心残りというよりは……うーん」

 若手たちとの時間を振り返った宮本コーチは、そう話すと言葉に詰まった。その切ない表情を見ると、子どもの頃に読んだ『泣いた赤鬼』(浜田廣介・作)を思い出してしまった。

この2年間、チームの底上げに尽力してきたヤクルト宮本慎也ヘッドコーチ 2017年秋、ヤクルトの真中満監督がシーズン96敗の責任を取るかたちで退任となり、小川淳司シニアディレクターの監督再任が発表された。その流れで宮本ヘッドコーチの就任が決まると、「どんな練習が待っているんですかね……」(山崎晃大朗)と戦々恐々とする選手もいた。実際、その練習は厳しく、ハードなものだった。その意図について、宮本コーチはこう語る。

「やっぱり練習って、厳しいのが普通なんです。当時、ほかの解説者の方たちと話をしても、ヤクルトは練習しない、ゆるいと。僕としては、まずは練習を増やそうと決めました。そうしなければ技術不足も補えません。キャンプも含め、とくに若い選手は1年を通して練習させようと」

── 2年前の松山キャンプでは、朝9時から夕方の17〜18時まで厳しい練習が続きました。選手たちの悲鳴があちこちから聞こえていましたが、練習が終われば誰もが充実感に溢れた表情をしていました。

「練習量としては、この時の松山キャンプがマックスでした。その厳しさのなかで、ケガ人は野手ひとり、投手ひとりでした。さすがにプロ野球の世界に入ってきただけあって、体力はあるなと(笑)。僕としては、この練習を3年ぐらい続けようと思っていました。その先は、僕がチームにいるとしたらメリハリをつけてやっていこうと。そういう想像はしていました」