DeNA大和の光るベテラン力。
目指す頂へ「あの悔しさを晴らしたい」
誰もが肝を冷やしたに違いない。
9月14日のヤクルト戦、8回裏、坂本光士郎の投じた145キロのストレートがダイレクトで大和の右足首にヒットした。バッターボックスで卒倒した大和は苦悶の表情を浮かべ立ち上がれず、そのまま担架で運ばれグラウンドを去っていった。ざわつく客席、慌ただしくなるベンチ、たれこめるような重い空気が横浜スタジアムに漂っていた。試合後、自ら車の運転をして帰路につき、15日の中日戦にも出場の意思を示した、という情報もあり、ベイスターズにとって貴重な戦力を失わずにすみそうだ。
ベイスターズに移籍して2年目、今やチームに欠かせない存在になっている大和 この数日前、大和に話を聞いていた。
持ち前の守備力を買われ、昨シーズンはセカンドや外野を守ることがあったが、今シーズンは本職であるショートに専念し、打っても1番や9番といった難しい打順をこなしながら、ここまでチームを支えている。
DeNAは春に10連敗を喫し最下位に沈む苦しい状況もあったが、浮上のきっかけとなった交流戦で大和は2度のサヨナラ安打を放ち、チームに勢いをもたらせた。
打率こそシーズン当初から2割3分台だが、得点圏打率は3割近くをマークし、とくに満塁の場面では11打数6安打(成績は9月12日現在)と勝負強さを見せている。大和は「たまたまですよ」と謙遜するが、勝負どころで頼れる選手であることは間違いない。
今季の大和のバッティングの特徴は、センター方向へのヒットが多くなったことだ。内角の難しいボールも、巻き込むようなスイングでヒットにする場面が目立つ。「極端に言えば、試合ごとにフォームは変えています」と語る大和だが、現在のバッティングに大きなヒントを与えたのがチームメイトの宮崎敏郎だった。大和はシーズン前、宮崎にアドバイスを求めた。
「最初に聞いたのは、バットの軌道についてです。基本的に長打を狙うためには、バットを上から落とすといったイメージなんですけど、宮崎のバッティングを見ていると、上から振っているようで、実際のところは下から出ている。
もしかしたら、自分ものその方があっているのかもしれないと思ったんですよ。実際、そうやってスイングすると、インコースの厳しいボールでもさばけるようになりましたからね。いいスイングができている時は、やっぱりヒットが出ますよね」
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