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打倒・松坂に燃えた夏。PL主将の
平石洋介は最高のチームを完成させた (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 平石は「センバツが終わってからは、キャプテンとしての責任感が増した」と言った。それは、コーチの清水も感じていたことだ。

「こんなこと言うたら、監督に申し訳ないけど、平石は全部を整理して、試合では選手らに指示を出していたと思いますよ。そういう大変な役割を担いつつ、平石って男は、3年生やベンチメンバーだけじゃなしにね、部員全員をまとめ上げていったんですわ。大人には見えない子どもらの世界でね。平石のキャプテンシーは随一やったんです」

 夏。PL学園は南大阪大会を制し、リベンジの挑戦権を得た。その舞台は、当人たちが予期せぬ形で訪れた。PL学園が3回戦を戦う前に行なわれた、準々決勝の抽選会。主将の平石は、クジを引く前に苦笑いしていた。

 6校の対戦相手が決まる。クジを引く前にPL学園と横浜がベスト8で対戦することが、その時点で決まった。抽選を見守っていた甲子園のファンが歓声を上げる。平石が横浜の主将・小山良男を見ると、互いに目が合った。

「決まってもうたな」

 ふたりとも頷きながら、ぎこちない笑みをつくったと平石は記憶している。

「欲を言えば『夏の甲子園決勝で』というシナリオを、僕らは描いていましたからね。でも、そこはどうすることもできないですから。良男と笑いながらひと言、ふた言、会話をしたような気がしますね」

 選手の誰もが「横浜を倒さなくては日本一になれない」と抱いていたものの、先を見据えるばかりに目の前の敵に足元をすくわれることはよくあることだ。だからむしろ、準々決勝で対峙することがわかったことは、チームにとって好都合だった。

 5対1で快勝した3回戦の佐賀学園戦後から、PL学園はすぐに臨戦態勢に入った。帰りのバスのなかで清水が提案する。

「学校の室内で打ちたいやつおるか?」

 バッテリーと清水が指名した数人の選手を除き、全員が挙手した。

 PL学園の室内練習場。そこには、清水が理想としてきた光景が形成されていた。

「これが、平石がまとめ上げたチームや!」

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