オリックスが「世界のナカガキ」獲得。MLB選手もその運動学に心酔 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

「選手それぞれ、打ち方、投げ方が違うように見えて、じつは横方向に行って、踏み込んで、踏み込んだ力が回転のエネルギーに転嫁する、という動きの流れに関しては全員、共通なんです。寄せる、行く、踏み込む、回転する。その寄せ方、行き方、踏み込み方、回転の仕方が個性によって変わっているだけで、本質は同じ。足が地面を噛む感覚を知って、その感覚を再現するために体力トレーニングと運動技術を学んでいく。それが僕の目指しているところです」

 バファローズは1996年以来(ただしオリックスとして、バファローズとしては近鉄時代の2001年以来)、じつに22年間、優勝から遠ざかっている。もちろん、12球団で最長だ。クライマックスシリーズ出場も2014年以来なく、去年もシーズン途中まではAクラスを争っていたものの中盤以降に失速し、4位に終わった。となればバファローズファンは当然、中垣さんにも期待したくなるだろう。

 しかし、結果を残せば認められる選手と違って、劇的に前へ進むことのない世界で中垣さんは戦っている。最大の目玉だとはいえ、"ナカガキ"の補強が効果的だったということが目に見えてわかるまでには時間がかかる。中垣さんはこうも言った。

「たとえば、今、舞洲(二軍)にいる選手のなかには、すぐにでも一軍で仕事をしていなきゃいけない選手というのがいるんです。その準備が着々と整いつつあるのが2年目の左ピッチャー、田嶋(大樹)だと思います。彼は持っている才能がとてつもなく大きい。投球動作の中でいろんな要素を噛み合わせて、最後、力をリリースに集めていくということに関して、素晴らしい才能を持っている。

 けれども、これを維持していくために必要な......ここ、体力という言葉だけでは表現し切れないんですけど、維持するために必要な最大値を上げておくというところがまだ足りていません。そこは球速とか、わかりやすい指標ではなく、よりゆとりを持って、一球一球に余裕を持って、本人の持っている噛み合わせの能力に合致するだけの体力を身につけていくことが必要なんです」

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