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すべては楽天のために。平石洋介新監督
「僕の評価はどうだっていい」 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして14年後、平石は千葉での開幕第2戦で、監督としての初勝利を手にした。

 ウイニングボールは、ゲームを締めくくった松井裕樹から渡された。選手の心遣いは嬉しかったが、喜びは勝利とそれくらいだった。

「どうなんでしょうかね? 監督としてはとくに......。周りはそう言ってくださいますけど、『監督になったから』というのはないですね。まず、チームが勝てたことが一番ですから」

 平石という人間は、周囲が求めるような監督像に執着していない。その心情は、1対1で話すとよくわかる。

 監督として――そういった類の質問を投げかけると、彼は優しく制止するように、自らの想いをぶつけてくれるのだ。

「これ、きれいごとでも何でもなくてですね、僕の評価なんてどうだっていいんですよ。監督はチームの全体を把握して決断しますし、それが勝敗を左右するわけですから、責任の重さはものすごく感じています。だから、とにかく勝ちたいんです。強くして、魅力あるチームにしたいんですよ。お世話になっているイーグルスをなんとかしていい方向にもっていきたい。その想いしかないんです」

 世間が今年の平石に大きな関心を寄せるのは、単に新監督となったからではない。

 38歳の12球団最年少監督であり、楽天初の生え抜き監督。そして、最大の金看板こそ、「松坂世代最初の監督」であることだ。

 これらは事実ではあるが、平石を祭り上げるための材料ではない。その若さ、松坂大輔という誰もが知る選手とリンクさせることで、多くの人間が平石に注目するが、「チームをいい方向にもっていきたい」という彼の根っこは、コーチ時代から何ら変わりはない。

 今年の春季キャンプから楽天を見ていて、変わったと感じる点はいくつもある。

 ひとつ挙げれば、練習前のウォーミングアップと試合前のシートノックだ。平石からこれらについて「どう思います?」と尋ねられた。明らかに変わったとすれば、声が出るようになった――そう伝えると、新監督が微笑む。

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