岡林洋一はデストラーデに2被弾。
「どうやって抑えればいいんだ!」 (2ページ目)
当時を振り返る岡林氏 photo by Hasegawa Shoichi何かをつかんで、後のピッチャーに託したい
――この連載において、スワローズの方々はみなさん、「当時の西武に勝てるわけがない」というニュアンスのことを口にしていました。岡林さんはどう感じていましたか?
岡林 僕も「勝てる」とは思っていなかったです。ただ、「勝てるはずはない」とも考えてはいなかったと思いますね。「まともにいっても勝てないだろう」という意識だったと思います。ただ、僕は大事な初戦を任されたわけですから、「何かをつかんで後のピッチャーに託したい」という思いを強く持っていました。
――そして迎えた初戦は、本拠地・神宮球場のマウンドでした。この日の調子はどうだったのですか?
岡林 調子はよくなかったですね。真っ直ぐが走っていなかったので、ストレートでまともに勝負することができない。だから序盤は、変化球でごまかしていたような感じです。中盤からは徐々に立ち直っていきましたけど。
――プレッシャーは感じていなかったけれど、調子は万全ではなかったんですね。
岡林 先ほど、「プレッシャーはなかった」って言いましたけど、いざマウンドに立って初球を投げるまでは、自分でもわかるほど足が震えていました。「みんなに見えるんじゃないかな?」って思うぐらいの震えでしたね。最初はそうでもなかったんです。でも、マウンドに立って投球練習が始まって、第1球を投げるときには、もうブルブル震えて、足がガクガクしていたんです。それがとても気持ちよかったですね。
――気持ちよかった?
岡林 はい。その震えが気持ちいいんです。もちろん西武打線は怖いんですよ。もう全部が怖い(笑)。だって、まったく穴がないんですから。でも、それが気持ちいいんです。足は震えているのに、なぜか気持ちいいんです。
延長12回、まだまだ投げるつもりだった
――そして、12時33分。ついにプレイボールを迎えます。ライオンズの先頭打者は辻発彦・現西武監督でした。
岡林 事前のデータで「辻さんは(日本シリーズ)初戦の第1打席でいつもヒットを打っている」と知らされていました。だから、「辻さんをなんとか打ち取ろう」と思っていたのに、アッサリとセンター前にヒットを打たれました(笑)。でも、二番の平野(謙)さんが簡単にバントで送ってくれたので、気持ちはラクになりましたね。ランナーは二塁に進んだけど、バントで簡単にワンアウトをもらえると、ピッチャーはすごくラクになるんです。
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