小園海斗と中村奨成、広島ドラ1に明暗。プロの世界で生き抜くリアル (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そういえば、昨年の広島キャンプは"中村奨成"の話題で持ち切りだった。

 そして2年目の今年、その中村はリハビリの真っ最中だという。キャンプスタート早々、右第一肋骨を疲労骨折し、治療とリハビリの日々を送っている。

 昨年、中村はファームで83試合に出場し、打率2割1厘、4本塁打の成績だった。数字としては物足りないが、ステップとしてみれば、そんなに心配することはないと思うのだが、チーム内の中村を見つめる視線がなかなか厳しい。

「うちは練習が厳しいことで有名かもしれませんけど、それは自分から練習するっていう意味ですから。『やれっ!』と言われて伸びた選手なんて、ひとりもいないんじゃないですか。そういう意味で、中村はまだ姿勢が甘いと言われても仕方ありません。高校まで競争してポジションを奪ったことがないと思うのですが、もう環境は変わっています。もっと実感して、気づいていかないと......」(広島球団スタッフ)

 野球の天才たちが集う"プロ野球"という世界。しかし、一軍の華やかな舞台で活躍できる選手は、ほんのひと握りに過ぎない。かつてイチローはこんな言葉を残している。

「努力せずに何かできるようになる人のことを天才と言うなら、僕はそうじゃない。努力した結果、何かができるようになる人のことを天才と言うのなら、僕はそうだと思う。人が僕のことを、努力もせずに打てるんだと思うなら、それは間違いです」

 プロ野球という世界は、努力の天才たちだけが躍動できる空間なのかもしれない。広島のキャンプを見て、あらためてそんなことを考えさせられた。

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