逆転の発想で甲斐拓也が挑む究極捕手像
「盗塁阻止より企画させない」

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 甲斐キャノン――昨年の日本シリーズで新記録となる6連続盗塁刺を決めて見事MVPに輝くなど、脚光を浴びたソフトバンクの捕手・甲斐拓也。かつて背番号130の育成選手だった男は一躍スター選手の仲間入りを果たし、オフは全国ネットのテレビ番組にも多数出演してファンを喜ばせた。

 しかし、素顔の甲斐はとにかく謙虚。浮かれることもなく、今回のインタビューでも「僕なんてまだまだです」という言葉を何度も繰り返した。とはいえ、これまでと立場が変わったのは事実だ。プロ9年目の春季キャンプ。球団史上初の3年連続日本一、そしてリーグ優勝奪回を目指すチームの"扇の要"として、いま何を思うのか。そして"甲斐キャノン"のその先にあるものとは――。

昨年の日本シリーズでMVPに輝いたソフトバンクの甲斐拓也昨年の日本シリーズでMVPに輝いたソフトバンクの甲斐拓也―― 毎年、春季キャンプに臨むにあたって、新しい気持ちでスタートされると思いますが、今年はどんな思いでしたか。

「今まではガムシャラに、そして先輩たちについていこうという感じでした。でも今年に関しては、昨年試合に出させていただいたなかでシーズン2位という悔しさが残り、このままじゃダメだと気づきました。その気持ちのままキャンプに入ってきたという感じです。しっかりと周りも見て、1年間を戦い抜く土台をつくり上げるというのがテーマです。そのなかで投手陣とのコミュニケーションも大事にしています。関係性をもっと築いていかないといけませんから」

―― 投手陣とのコミュニケーションはどのようなかたちで?

「なるべく会話を多くするように心がけています。今年は(主力のA組に)新人が多い。彼らは気を遣うと思うので、こちらからどんどん話をするようにしています。夜は食事に出かけることもありますし、キャンプ宿舎の食事会場でもピッチャーとなるべく同じテーブルに座るなど、ユニフォームを着ていない時間をどのように使うかを常に考えています」

―― それにしても昨年の日本シリーズからオフのフィーバーはすごかったですね。

「ありがたいですよね。でもリーグ優勝できなかったという反省、悔しさの方が大きかったです」

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