脱・捕手主体を吉井理人は提唱「投手は自分の特徴を知り、生かすべき」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 また、吉井は(3)と(4)を「Aチーム」、(1)と(2)を「Bチーム」と呼んでいる。リリーフ陣の場合、勝ちパターンで投げるメンバーが「A」、それ以外のメンバーが「B」となる。

 ただし、「Aチーム」の選手が故障もしくは不調になれば、「Bチーム」の選手が勝ちパターンで投げることもある。先発陣であれば、ローテーション投手が「Aチーム」で、先発候補が「Bチーム」だろう。

 そういう意味では、「Bチーム」がどれだけ成長して「Aチーム」になれるか。そこは投手力強化のポイントになる。自ずと、新たに吉井が指導するロッテ投手陣の「B」に注目したくなるが、今、意外なものがその成長を妨げているという。

「今は情報がたくさんあって、若いピッチャーがかえってマウンドでパニックになることがあります。情報に振り回されて、自分のピッチングができない選手が多くなってきているんですね。とくに、キャッチャーが相手バッターをやっつけるのに実権を握っていて、打者の情報を必要以上に生かしてしまうんです。キャッチャーが実権を握ることに関して、これは野村(克也)さんの責任でもあるとは思うんですけども(笑)。ただ、野村さんは、『第一にピッチャーが投げたいボールを投げさせなさい』って言っているので、今のキャッチャーの選手たちはそこを考えてないんです」

 1970年代、野村克也が南海(現・ソフトバンク)で絶対的な正捕手として君臨して以降、捕手が相手打者の情報を生かして配球を組み立て、ある意味では投手を操るようなリードが球界に浸透してきた。

 90年代前半から野村がヤクルトの監督として優勝、日本一と結果を出した時、古田敦也という名捕手が存在したことも大きく影響した。吉井が言う「野村さんの責任」とは、実際にはそれだけではないのに、相手打者を打ち取るための実権は捕手が握るもの、という前提ができあがったことだ。

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