貴重な左腕が悪夢の離脱から復帰。広島・床田が開幕ローテ入りを狙う (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Kyodo News

 それでも友人たちの励ましに支えられながら、歯を食いしばり、歩を進めることができた。何より、もう一度一軍マウンドに上がりたいという思いと、上がるんだという強い意思が前を向く力になった。

 球団への感謝の思いもある。広島は、トミー・ジョン手術とその後の復帰プログラムが確立されている米国にトレーナーやコーチを派遣するなど、リハビリ段階の投手のためにやるべきことを研究して導入。大野練習場には通常の半分の高さのマウンドも設けた。

 そして昨年8月8日、床田は476日ぶりに実戦マウンドに帰ってきた。中日二軍のクリーンアップを6球で3者凡退に切って取る再出発。持ち味の投球術は色あせていなかった。

 それどころか、1年目は線が細く見えた体はひと回り大きくなったようだ。地道なリハビリの甲斐もあって、腰回りや太ももは太くなり、投球の土台に安定感が増した印象を受けた。

 二軍での登板後は慎重に期間を空けながら、球数や投球回を制限しながら、一軍復帰への階段を上がった。一時期は佐々岡真司二軍投手コーチ(当時/現一軍投手コーチ)が「ポストシーズンの切り札になっても不思議じゃない」と期待していたが、故障明けということもあり、再発のリスク回避のため早期昇格は見送られた。

 その後、久しぶりに一軍首脳陣やチームメイトと再会した昨秋キャンプでも、健在ぶりを示し、左腕への期待は、2018年一軍ゼロ試合登板とは思えないほど膨らんでいる。

 本人は「何とか先発6番手にでも割って入っていければ」と言うが、球団関係者が2019年の開幕ローテーション候補について話す時、5番手以内に床田の名前が挙がる。

 今オフは床田にとって、プロ野球選手として過ごす"初めてのオフ"のようなものだった。それまでは練習メニューに制限があったからだ。

 このオフは「投げない間隔を空けたくなかった」と投球練習を継続した。広島で2回、先乗りしたキャンプ地・日南で2回のブルペン投球を経て、キャンプを迎えた。

「この2年間は何もしていないので、チームに貢献したい。その思いが強い」

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