大家友和が力説。「資格を持った人間にしか投げられない」魔球がある (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by ©Yokohama DeNA Baystars

 そしてもうひとり、DeNAにはナックルを投げられる人間がいる。それは冒頭のコメントの声の主でもある、今季から二軍ピッチングコーチを務める大家友和だ。

 大家は1998年にベイスターズを自由契約となりアメリカへ渡ると、紆余曲折がありながらもメジャー通算202試合に登板し51勝をマークした。

 その後ベイスターズに復帰して2年間を過ごすと、2013年から日米独立リーグでプレー。大家がナックルを体得しようと思ったのはこの独立リーグ時代のことだ。

 理由はいくつかあったが、故障により球威の回復が見込めないこと、レッドソックス時代にウェイクフィールドと同僚で、キャッチボールをして興味を持ったことが挙げられる。野球選手として生き残りをかけた決死の選択であり、目指すは日本よりもナックルへの理解が深いMLBだった。

 しかしその習得は困難を極めた。詳しい投げ方がわからなければ、教えてくれる人もいない。自ら研究し、思索を巡らせ、誠心誠意ナックルと向かい合うしかなかった。

 漆黒の闇夜を手探りで進むような努力の結果、ナックルボーラーとなった大家は2014年にトロント・ブルージェイズのキャンプに招かれ、さらに2016年にはボルティモア・オリオールズとマイナー契約を結ぶに至った。

 そして翌年のキャンプに参加するも、戦力外通告を受け、41歳で現役引退を決意。ナックルボーラーとしてメジャー復帰には至らなかったものの、誰にも真似のできない道のりを歩んだ24年間のプロ生活だった。

 大家はナックルを「投げるのに資格が必要なボール」だと断言する。

「簡単に投げられないのは僕が一番わかっているし、伝えたところでナックルを本当に理解する人は出てこないと思っているんです。考えられない領域にあるというか、だから僕はナックルを教えることはできませんし、教えるつもりもないんです」

 かつて大家に教えを請うた選手がいたという。その選手にはかなりの覚悟はあり、大家もやるのかと何度も念押ししたというが結局、習得するには至らなかったという。

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