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ベンチの指示で内角へズバズバ。
荒木大輔は日本シリーズ初戦で攻めた (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――1回表にハウエル選手の3ランホームランで先制したものの、1回裏には2つのデッドボールがきっかけとなって1点を返されました。それでも、「意図通り」なのですか?

荒木 はい、そうです。でも、これ以降、出すはずのインサイドのサインを古田(敦也)が出さなくなったんです。だから、ずっと首を振って、インサイドのサインが出るまで待ちましたね。古田としては甘く入ることを恐れたんでしょう。でも、僕はもっとインサイドを攻めるつもりでサインを待っていました。

――翌日の第2戦目の試合前には石毛選手に謝っていますね。でも、意図した通りのボールを投げたわけだから、あまり罪悪感もなかったのですか?

荒木 なかったですね。本当に申し訳ないとは思いますし、頭に当たったり骨折してしまったりした場合には、ちょっとさすがにアレですけど、それ以外ならば別に......。それを気にし始めたら、ピッチャーはやれないんで。

――このときのデッドボールが原因となって、石毛さんは「今でもペンが握れない」とおっしゃっていました。

荒木 えっ、本当ですか? それはちょっとマズいですね。今度お会いしたら、ちゃんと謝っておきます。

「本当の強さ」はヤクルトではなく、西武にあった

――1993年の日本シリーズでは初戦に勝利投手となりましたが、当初予定されていた第6戦の先発は実現しませんでした。これはどういう事情からですか?

荒木 一度、雨で流れた試合がありますよね。

――10月29日の移動日を挟んで、30日の第6戦が雨天順延となっています。

荒木 そうです。それでスライド登板ではなく、先発そのものが流れたんです。第7戦までもつれたけど、第1戦の勝利投手が1試合だけの登板だったんです(笑)。「そんなピッチャー、今までいたのかな?」って、みんなと話していたことを覚えています。確か、第6戦はタツ(西村)が先発したんだけど、「お前、肩が痛いだろ? オレと代われ」って、冗談を言っていました。

――調子もよくて、自信もあった荒木さんとしては、もっと投げたかったですね。

荒木 だから、第7戦はブルペン待機だったんだけど、複雑な思いでしたよ。「もっと投げたい」と思っているんだけど、僕が投げるとしたら、先発の川崎が打たれなきゃいけないわけだし......。でも、最後、高津が胴上げ投手になった瞬間は本当にうれしかった。自分が投げないのにあそこまで喜べたのは、アレが初めてのことでしたね。

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