森友哉は「球界の絶滅危惧種」。「打てる捕手」として進化を遂げた (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 対して森は、打たれることを恐れず、大胆に攻めていける強さがある。ソフトバンクとの大一番が象徴的で、緩急を活かして郭をリードした。しかも相手は千賀で、3連戦のカード頭だ。捕手として得るものが大きかったのではないか。

「キャッチャーとしてというよりも、チームとして、首位攻防戦の1戦目にああいう形で勝てたのは大きいですね」

 思わず質問を自省するほど、チームでもっとも多くマスクをかぶっている男のプライドを感じさせられる言葉だった。

 今季は捕手として計81試合に出場し、パスボールはリーグで3番目に多い5個(楽天の嶋基宏が最も多く、112試合で9個)。秋元コーチの言うように、疑問の残る配球もある。

 だが、キャッチングは目に見えて向上し、盗塁阻止率は甲斐拓也、髙谷裕亮(ともにソフトバンク)に続いてリーグ3位だ。なによりマスクをかぶることで、森はリード面の財産を蓄積させている。9月27日のソフトバンク戦の前には、こう話していた。

「シーズンを通してやっていると、相手の苦手なコースなどは、ひととおり頭に入っているつもりなので。そこは大きいかなと思います」

 捕手としての配球力は、打席での力にもなっている。この試合で0−0の2回無死から栗山巧、中村剛也が連続四球で歩いた後の初球、バンデンハークが内角高めに投じた147kmのストレートを豪快なスイングでライトスタンドに突き刺した。

「フォアボール、フォアボールの後、(捕手とすれば)初球は取りにいきたいものですし。ピッチャー心理からしてもストライクをほしい場面なので、初球からいこうと決めていました。ストレート待ちでしたね」

 森は基本的に球種やコースを読まず、「来た球を打つ」タイプだ。「読みが外れると打てないから」と、その理由を話していたことがある。

 しかし今は、読んで打つケースも増えてきた。リーグ6位の得点圏打率.341という勝負強さは、そうした点と無関係ではない。森の打力からすれば今季の打率、本塁打、打点ともに満足できるものではないだろうが、キャリアハイを大きく更新する70四球(リーグ5位)は大きな成長だ(次点は2015年の44個)。

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