元日本ハムの優良助っ人クルーズ、
Youはなぜ台湾代表のコーチに? (2ページ目)
故郷のアローヨという町では、メジャーで2000本安打を記録した兄のホセ、巨人でもプレーした弟のヘクターとともに"クルーズ3兄弟"として英雄視されている。
そのアローヨにある彼の豪邸を訪れたのは、もう10年ほど前のことだ。1階には吹き抜けのホールがあり、そこには日本での思い出の品々がところ狭しと展示されていた。
そんな彼も60歳を超えた頃には、ウインターリーグのメンバー表に名前を見なくなり、余生をあの御殿で過ごしているものだと思っていた。
そんな彼についてのニュースを目にしたのは2年前のことだった。台湾プロ野球の名門・中信ブラザーズの打撃コーチに就任したとの報道があった。会いに行こうかと思いつつも時間だけが過ぎてしまったが、今回アジア大会の取材でジャカルタに来ると、偶然、彼の名前を目にしたのだった。
「しばらく見なかったな。今日はスカウトかい? 台湾にはいい選手がいっぱいいるよ」
久しぶりに握った手は、今でもバットを振り込んでいるのだろう、相変わらずゴツゴツしていた。10年前に会った時もトレーニングを欠かさないと言っていたが、現役当時よりもずいぶん恰幅はよくなっているものの、67歳になった今も体を動かしているのはわかる。
台湾に来て3年目。今シーズンは富邦ガーディアンズのコーチとして開幕を迎えたが、前期シーズン限りでナショナルチームに転籍となった。
そして今回、台湾代表のコーチとしてジャカルタに来ていたのだ。「熱帯の気候はプエルトリコと似ていいだろう」と話を向けると、首を横に振り、こう返してきた。
「いやいや、プエルトリコの方がよほどいいよ。オレはあの島が大好きなんだ」
彼の故郷、プエルトリコは言わずと知れた野球強豪国のひとつだ。世界最高峰の大会、WBCでは2大会連続で決勝にコマを進めている。自前のプロリーグもあり、最近では松坂大輔(現・中日)がプエルトリコのウインターリーグでプレーしたことで、その存在を知っている人も多いだろう。
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