プロ野球「一軍・二軍ボーダーラインの心理」。ヤクルト谷内亮太の場合 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 そして6月1日の楽天との交流戦(楽天生命パーク)。代打で登場した谷内はセンターに大飛球を放つ。「あわや」と思わせる会心の一打だったが、田中和基が背走してスーパーキャッチ。谷内にとっては何とも悔しい結果となった。

「正直、『なぜアウトになるのか』という打球でした。納得できる打席ではありましたが、今の僕は当落線上の選手なので、いくらいい打球を10打席続けても結果が出なければ下へ落とされる世界です。今は内容ある打席を追求してくのか、それとも結果を求めるのか、バランスの取り方が難しいです」

 6月9日、ヤクルトの試合前練習を見ていると、いつもと様子が少し違うことに気づく。谷内の守備練習が一向に終わらないのである。宮本慎也ヘッドコーチがノックをし、土橋勝征内野守備・走塁コーチが見守っている。前日のオリックス戦で、谷内は途中からショートの守備につき、1イニングに2つの失策を記録してしまったのだ。

「よし、もう1本いこう」(宮本コーチ)

 全体練習が終わってもノックはまだ続き、ようやく終わると谷内はグラウンドにへたり込んだ。持久力に自信のある谷内がしばらく動けないほど厳しい練習だった。

「全体練習のなかで、ずっとノックをしていただけることは幸せなことだと思っています。石井(琢朗)コーチからは『内野手はまず守備。それができないと試合に出られない。もちろん、バッティングも大事だけど、守備はその倍の練習をしないと』と言われています。

(前日のエラーは)メンタルの弱さだったり、準備不足だったり......。今年に限っていえばバッティングに比重を置いていたので、あのエラーは守備を見つめなおすいい機会になりました。バッティングも守備も、もっと向上心を持って取り組みたい。ここでしっかりやっていけば、またスタメンの機会がめぐってくるかもしれません」

 6月13日、メットライフドームでは西武の選手が早出練習でバットを振り込んでいた。そのとき、ビジター側のベンチからグラブとボールを手にした谷内が出てくると、おもむろにコンクリートの壁に向かってボールを投げた。「コツン」と跳ね返ってきたボールを、腰をおろして丁寧に捕球。その動作を何度も繰り返していた。

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