「井の中の蛙」だった菊池雄星。残されたハードルを越えてメジャーへ (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 小池義弘●撮影 photo by Koike Yoshihiro

「僕自身はエースという名前にこだわりはなく、とにかく自分のいいボールを投げて自分の能力の100%に向かって努力するだけですけど、周りは求めるので。周りが求めるエースってなんだと言ったら、大事な試合や相手にいかに勝てるかだと思うので、そこが今年は一番のテーマかなと思います」

 打倒ソフトバンクのポイントのひとつが、対左打者だ。リーグ最高の強打者・柳田悠岐や、コンタクト能力が極めて高い中村晃、伸び盛りの上林誠知に加え、本多雄一、明石健志も手強い。

 一方、菊池は2017年の被打率が対右打者・打率.179、対左打者・打率.193でともにリーグトップだったが、ストレート、スライダー、カーブという主要な持ち球を考えたとき、右より左に組みしにくい傾向がある。左打者へのカーブが抜けると死球になりやすいため、あまり投げず、打者にとって球種を絞りやすくなるからだ。

 そこで今季はカーブの精度向上を掲げつつ、新たに「左打者の内側に食い込む球」の習得を図った。ツーシーム、シンカー、チェンジアップ、フォークとカテゴライズされるような球である。

「ひねったりするようなことはしたくない。真っすぐに影響が出ないなかで覚えたい」と考え、「真っすぐと一緒」という感覚で投げられるフォークの完成度を高めようとした。だが開幕1週間前、3月23日のDeNAとのオープン戦では1球も投げなかった。

「銀さん(炭谷銀仁朗捕手)やコーチと話をして、『もしあの落ち幅なら、球速を上げてくれ』と言われて。けっこう試したんですけど、球速もなかなか変わらないし、落ち幅も変わらなかったので」

 代わりに試したのが、ツーシームだった。前日22日にマッサージを受けている際、巨人から移籍してきた高木勇人にコツを教わり、23日の試合前にブルペンで投げると感触がよかった。

「安定してストライクゾーン付近にいく球があれば、球種は何でもいいと思っていたので。高木さんに聞いたら握りも教えてくれたので、試したという感じです」

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