4割男・近藤健介に憂いなし。
私たちは異次元ゾーンを目撃するのか

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • 田口有史●撮影 photo by Taguchi Yukihito

 大谷翔平が海の向こうに新天地を求めた今季、プロ野球ファンにとって新たな夢を託したくなる選手が古巣の北海道日本ハムにいる。

「近藤は今でも連絡をくれるんだよね。そうやって、いろんなものを得ようとしているんだと思う」

アリゾナの春季キャンプで汗を流す近藤健介アリゾナの春季キャンプで汗を流す近藤健介 横浜高校時代にコーチ、部長として数々の名選手を育てた小倉清一郎氏は、教え子の近藤健介の活躍を楽しみにしているひとりだ。プロに入ると次第に疎遠になる選手も少なくないが、近藤はいつまでも変わらないという。

 高卒6年目――23歳で迎えた2017年シーズン前半、この左打者の活躍はセンセーショナルだった。開幕からハイペースで打ち続け、6月1日のDeNA戦終了後には打率.415にまで上昇させる。出場47試合目での打率4割キープは、1973年に張本勲がつくった球団記録を更新するものだった。

 しかし、6月3日の阪神戦で右太もも裏を痛め、1週間後の11日に登録抹消される。「腰部椎間板ヘルニア」と診断されて長期離脱が確実となり、出場50試合時点で打率.407の高アベレージを残しながら、プロ野球初の4割打者への挑戦は幻と消えた......かと思われた。

 だが、9月28日の楽天戦で復帰すると、以降の7試合で17打数8安打とヒットを重ねていく。規定打席には遠く及ばなかったものの、このシーズンを57試合出場、打率.413で終えた。未公認記録ではあるが、100打席以上での打率4割は史上初めてだった。

 さらにシーズン終了後にはU24の侍ジャパンに選ばれると、アジアプロ野球チャンピオンシップ2017で打率.583と打ちまくる。もちろん、長いペナントレースと短期決戦を同列で比較することはできないし、相手の韓国と台湾の投手力が日本のプロ野球レベルと比べて大きく劣っていたのも確かだ。

 それでも、侍ジャパンの面々は近藤の卓越した打撃技術、そして勝負強さを間近で感じ取っていた。

「近藤は次元が違います」(外崎修汰/西武)

「こういうプレッシャーのかかる大会で結果を残せる近藤はすごい」(山川穂高/西武)

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