栗山監督が描く大谷翔平のメジャー。「DHがなくても二刀流はできる」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

―― つまり、今の大谷選手には、ダルビッシュ有投手や田中将大投手のような、メジャーで即戦力というイメージを持っていないということですか。

栗山 だってピッチャーで言うなら、ダルほど安定したフォームで投げられているわけじゃないし、マー君のような絶対的なコントロールを身につけているわけでもない。しかも翔平は二刀流をやるという大変さも味わわなきゃならないし、それに伴ってメジャーという環境で何が起こるのかも想像できない。道なき道を初めて歩いてみて、そこをどうクリアしていくのかということをみんなに示すのが、大谷翔平の使命でしょ。ファイターズでも、誰もが無理だと言ったことをやり切った。本当に努力して、できるということを示して、みんなに勇気を与えた。今度はそれをアメリカで示すためには、体もしっかりさせなきゃいけないし、もっともっと野球がうまくならなくちゃ。もちろん、まだまだうまくなるし、まだそのスタートに立っただけだからね。

―― 監督は、メジャーの野球が大谷選手にどんな刺激を与えてくれると感じてますか。

栗山 おそらくね、翔平は生まれて初めて、「オレの野球、アカンな」と思わされることにぶつかるはずなんだよ。幸か不幸か、日本のプロ野球に入ったときにはそういうことがなかったと思うんだ。野球人生で初めての絶望感を味わうからこそ、本当の大谷翔平が世に出てくる可能性がある。それをオレは楽しみしているんでね。本当に世界一の選手になると思っているから、我々としては本人が行きたいと言ったタイミングで出すべきだと考えたわけで、日本でどれだけの数字を残せたとしても、それをもって完成するような選手じゃないでしょ。メジャーでさらに成長するためには、なんといっても体だよ。体さえしっかりすれば、いずれ結果は必ずついてくる。あの環境で、ボールも替わって、体に負担がかかるなかで、きっと苦しみながら、のたうち回って努力し続けるんだろうね。そうなったら、あの大谷翔平はいったいどこまでいっちゃうんだろうって、そういう楽しみはオレの中では大きいよ。

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