名コーチが伝授。短期決戦のCSでやるべきこと、やってはダメなこと

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Kyodo News

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第9回

 MLBに続き、日本のプロ野球もポストシーズン開幕が迫ってきた。まもなくクライマックスシリーズ(CS)が始まるが、レギュラーシーズンとの違いとはどのようなものなのか。近鉄、ヤクルトなどでコーチを務め、CSや日本シリーズ進出の経験を持つ伊勢孝夫氏に短期決戦の戦い方について聞いた。

(第8回はこちら)

短期決戦では主軸の働きが試合の結果に大きく影響すると伊勢氏は言う短期決戦では主軸の働きが試合の結果に大きく影響すると伊勢氏は言う 私がヤクルトでコーチを務めていた2011年、シーズン2位となり、3位の巨人とCSファーストステージで戦い勝利した。しかし、ファイナルステージは1位の中日の前に敗れてしまった。正直、短期決戦の必勝法などというものはない。ただ、セオリーは存在する。こうした短期決戦で最も重要なことは「手堅い試合運び」ができるかどうかだ。間違っても奇襲や相手の意表を突いた作戦はすべきではない。

 確かに、見ているファンにすれば、つまらないと思われるかもしれない。だが、試合の内容を楽しんでもらうのがレギュラーシーズンだとすれば、勝利という結果に徹底してこだわるのがポストシーズンである。2011年のCSでも、当時の小川淳司監督に「ムチャだけはしたらいかんで」と助言したことを覚えている。

 具体的なケースを挙げれば、こちらが一塁に走者を出し、相手がバントシフトを敷いてきたとき。言うまでもなくCSで対戦するのはシーズンで戦ってきた相手である。目をつぶっていても相手のシフトはわかる。そんなとき、相手の裏をかいてバスターやエンドランを仕掛ける作戦もある。成功すればチャンスは一気に広がり、ベンチのムードも高まる。

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