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ヤクルト真中監督しみじみ
「幸せな時間は、勝って酒を飲む夜でした」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

―― いい思い出はちょっとの時間と言われていましたが、そのなかでも幸せな時間はどんなときでしたか。

「試合に勝った夜に酒を飲んでいるときでした。監督って、勝ったときはヒーローインタビューを受けた気分になるんですよ。もちろん、主役は選手たちなんですが、『サヨナラホームランを打った』みたいな気分にさせてくれるんです。逆に負けたら、自分のエラーで試合を落とした気分になってしまう。それくらい勝ち負けの差は大きかったですね。これだけ借金があっても勝てば本当に嬉しいですし、お客さんも喜んでくれる。監督業がやめられないのは、そこにも理由があるんでしょうね」

―― 監督になったことで、ご自身に何か変わったことはありましたか。

「選手のときよりも、試合に対する視野が広くなりました。あとはファンのありがたみをつくづく感じました。『ああ、こうやって応援してくれているんだ』ということを本当に実感できました。現役の頃は自分のプレーに精一杯で、いろんなものが見えていなかった。一昨年の優勝を決めた試合だったり、今年7月に10点差を逆転した試合だったり......あれは"ファン"が勝たせてくれた試合だと思います。この3年間は、本当に感謝の気持ちしかありません。これだけ借金が増えていくなかでも、たくさんのお客さんが来てくれ、声援を送ってくれた。僕は神宮のそういう雰囲気が好きでした。来年以降、選手たちは少しでもファンの期待に応えられるように、勝ってほしいと思います。勝って酒を飲んだほうが楽しいんですから」

 真中監督と過ごした3年間、喜びの時間はほんのわずかで、苦しいときの方がはるかに多かった。しかし、時間の経過とともに"この3年間"をとても懐かしく感じるに違いない。いつか真中監督が思い描いていた"選手の自主性"が実践されたとき、ヤクルトは再び勝つチームへと変貌することだろう。

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