3A時代の盟友もうらやむ、
大家友和の「流浪だけど幸せな野球人生」 (4ページ目)
ぶっきらぼう――書き手の立場からみた大家の印象をひと言で表せば、この言葉に集約されるだろう。良くも悪くも周囲に媚(こ)びることはない。メジャーリーグにおいても、リップサービスなどということは一切せず、素人じみた質問に対してはダンマリを決め込む。こうした姿勢が日本球界に馴染めなかった理由なのかもしれない。アメリカでも、3A時代に同僚相手に大立ち回りを演じたことがある。しかし、この「ぶっきらぼう」という言葉の裏返しでもある芯の強さが、世界の頂点で51個の勝ち星を積み上げた礎(いしずえ)であることは間違いない。
「3Aって、そういうところなんですよ。特にメジャーから落ちてきた選手は反骨心いっぱいですから。チームメイトはみんなライバルですからね。ギスギスしているんですよ」
前述の根鈴は、大家の姿勢に対してそう答えた。
「でも、いいヤツですよ。オレに対してもわざわざ挨拶しに来てくれましたから。ホントは気さくなヤツなんですよ」
昨シーズン、大家は登板のない日は所属している福島ホープスが配信しているネット中継の解説者として、マイクの前に座っていたという。若い選手のチャレンジの場として独立リーグを盛り上げようと、率先してファンサービスに務めていた。
そんな男が、ついにユニフォームを脱ぐ決意をした。アメリカでは、メジャー、マイナーが開幕を迎えた後、レベルの高い順に独立リーグが開幕していく。おそらく今回の決断は、最もレベルの低いリーグの開幕を待っていたが、結局、契約には至らず、引退を決めたのだろう。
「彼らしいと思いますよ。行き先がなくなったからやめるということですから」
根鈴は、そんな大家の野球人生をうらやむ。ナックルボーラーとしてメジャーの舞台に上がることはなかったが、力を出し尽くしての引退に、悔いは残らないはずだ。
大家の2度目の野球人生はここで幕を閉じた。しかし、すべてが終わったわけではない。大家友和3度目の野球人生に幸あらんことを願う。
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