菊池雄星が語った絶対的エースへの道。8年目の快投を自ら分析する (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 菊池の進化は、今季の開幕戦・日本ハム戦で早くも表れた。菊池は1打席目から後輩・大谷のインコースを何度も続けて突いた。大谷はプロ4年間で1000打席近く立ちながら、死球はわずかに2つしかない。コントロールに自信がなければ、捕手の銀仁朗も立て続けにインコースを要求することはなかったはずだ

「当ててしまったらしょうがないし、紙一重のところを突かないと抑えられないバッターになっているので......。たしかにピッチャーもやって、バッターもやって、球界のナンバーワンの選手ですから、当てたときのリスクも当然あります。でも、そこはやっぱりプロとして怖がらずにギリギリを攻めていかないと」

 1打席目はインコースを立て続けに攻めて追い込むと、外のスライダーで注文通り空振り三振。しかし、2、3打席目はカウントを整えるために投げ込んだインコースのストレートを大谷にうまくさばかれ、2安打を許した。

 チームは8対1で完勝したが、結果だけを見れば菊池が大谷に敗れたようにも映る。だが、これは菊池が今季果たすべき役割をひとつこなしたという意味も有していた。この配球はたった1試合のために組み立てたものではなかったからだ。

「次の試合もありますし、これから長い対戦がありますから。『左ピッチャーでもインコースにくるんだ』と思わせることは大事だと思います。僕の後に投げた武隈さん(祥太)のスライダーに開いて三振していましたし、結果的に次につながったのかなと。銀さん(銀仁朗)からも『打たれるかもしれないけど、カード頭として、エースになるんだったら、そういうところも我慢して攻めていこう』と言われていました」

 意識と無意識のバランスが整い、ようやく8年目にして迎えた大器の開眼。そして、菊池はこれから「エース」と呼ばれるために越えなければならない壁について、静かに語り始めた。

(後編につづく)

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