元メジャースカウトが危惧する
大谷翔平「30歳のピッチング」 (4ページ目)
すぐに結果を求められないアメリカに行けば、そこは矯正できたと小島は言う。上半身に力をつけるのではなく、下半身主導のフォームを作って、徐々にスピードが上がっていくのが理想だというわけだ。ところが、下半身を作るには時間がかかるため、早く答えを求めようとすると、どうしてもフォームは上半身主導になる。日本で大谷の投げるボールのスピードに注目が集まり、しかもバッターとしての筋力が必要だったこともあって、大谷は上半身の力を使って、ピッチャーとしての答えを出してきた。しかし、じつはそこに3つ目の問題が潜んでいる。
「だから、今の大谷くんはコントロールがよくないでしょう。まっすぐにしても変化球にしても、強いボールだから目立たないけど、彼はとんでもないワンバンを投げたりするし、軽くストライクが投げられない。キャッチボールを見たらわかりますよ。だから、歳を取ってボールが落ち着いてきてからの彼が、キレのあるまっすぐとコントロールで勝負できるイメージが沸いてこないんです」
体づくり、フォーム、コントロール――この3つのポイントは、すべて同じところに根っこがある。つまりは、10代の後半から20代の前半にかけて、結果を求めず、ポテンシャルを伸ばすことに主眼を置けば、大谷のピッチャーとしてのポテンシャルは最大限に伸びる。そういうメジャーの育成プログラムに小島は自信を持っているのである。
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