ドラフト「強行指名」はなぜ起きるのか。履正社・山口のケースを追う (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 思いもよらぬ指名に、もともと口数が多いタイプではない山口の顔もひと際硬くなっていた。ただ、プロに指名されたことへの喜びもあったのだろう。戸惑いの表情のなかで、時折、笑顔も見せていた。

 日本ハムについて問われると、「施設が充実している印象です」と話し、どこで知ったのかという質問には、「パンフレットを見たりして知りました」と答えた。

 一方、山口の横に座る岡田監督の表情は、様々な思いを巡らせているようで、「これから本人、親御さんとも話し合って、本人にとっていちばんいい道を考えていきたい」と話すにとどまった。

 今回の一件について、他球団のスカウトA氏は「山口のような条件付きの選手は、毎年数名いるんです」と言った。

 たとえば昨年、高校日本代表で活躍した東海大菅生の勝俣翔貴もそのひとり。当初、国際武道大への進学で固まっていたが、夏の都大会や日本代表で活躍。プロの評価も、本人のプロへの思いも一気に高まり、プロ志望届を提出。このときも「2位以上ならプロ、3位以下なら進学」との条件がスカウトに伝えられていた。

「あの件に関しては、大学側の意向があったと思います。『先に決めていたのだから』というところですね。もし『3位までならプロ』だったら指名した球団はあったかもしれない。いわゆる"プロ待ち"OKの大学、社会人チームがあり、こうしたケースが出てきます」(スカウトA氏)

 2009年のドラフトで阪神から指名を受けてプロ入りした藤川俊介(当時・近畿大)は、「3位以上ならプロ、それ以下なら社会人」と言われていた。ところが、阪神が指名した順位は5位。そこから交渉は長引いたが、最後は阪神入りで決着した。

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