日本か? アメリカか?
インディアンス村田透が揺れる胸中を告白 (3ページ目)
ただ、日本の球団とすでに話ができているのであれば、故障発症の危険もあるウインターリーグの参加はありえない。だとすれば、村田の言う通り、現時点で日本の球団との話し合いは進んでいないと考えるのが妥当であろう。ただ、だからといって、なにがなんでもメジャーを目指すというわけでもないと言う。
「ベネズエラに来たのは、アメリカでのプレー継続を目指すためでもないんです」
その声は明るかった。
「ここ(ベネズエラ)にいるのは、いろんなことを吸収し、レベルアップするためです。ここでは野球だけでなく、人としてもレベルアップできるような気がするんです。この国は、日本のように安心して出歩けるようなところではありません。衛生状態だってそうです。日本人にはなかなか想像できないかもしれませんが、喉が渇いたときに蛇口をひねって水を飲むなんてことも考えられません。黄色く濁った水道水が出てくるんですから。そんなの飲めるわけないですよね。断水なんてしょっちゅうですし、ミネラルウォーターを買いに行こうと思っても、夜は危険ですし、そもそも店にないことが多い。そういえば、ベネズエラに来てすぐに腹をこわしました。ほかの外国人選手と『またか』って笑い飛ばしましたけど」
さらに続ける。
「でも、そういう環境のなかで強いメンタルを持ち、しっかり自分をコントロールしないと、このリーグでは結果は出ません。そういう環境で自分を磨くことができるのは今しかないですから。ここでは結果よりもプロセス重視です。4月からレギュラーシーズンに入ると、なにがなんでも結果を残さないといけませんから」
村田が現在、袖を通しているユニフォームには「Magallanes(マガジャネス)」の文字が刻まれている。チーム名の由来は、大航海時代に大西洋から太平洋に抜け、人類で初めて地球一周をした航海者・マゼランにちなんでいるという。村田もまた、ベースボールという大海の荒波にもまれ、次なる寄港地を探しているところなのだろう。
3 / 3