91年V戦士が語る、カープ優勝を決定づけた黒田・新井と若手の関係 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 その"黒田効果"の影響を受けたひとりとして野村祐輔の名前を挙げた。野村は2012年に新人王を獲得し、翌年も12勝をマークするも、ここ2年間は苦しんだ。だが、今季はここまで14勝3敗と、最大の懸案事項だった前田健太の抜けた穴を見事に埋めた。

「『黒田さんでさえ(調子の)悪いときがある。そのなかで勝つための方法を辛抱強く探すことが大事なんだ』と。1点を取られても、気持ちを切り替えて次の1点はやらない。考え方に余裕のある投球が、1年を通してできた。黒田がメジャーから広島に戻ってきて2年。野村に限らず、黒田の取り組みや考え方が、ほかの投手に浸透していった。その効果は大きかったと思います」

 続いて、"新井効果"についてはこう語った。

「入団の頃からずっと見てきましたけど、バッティングの内容も集中力も、今年が一番と思えるほど充実しています。なにより、人間的に素晴らしい男。周りの選手の対しても態度で示せるし、言葉も持っているから、若い選手にも普通に会話ができる。本当の意味で"真のリーダー"と言える存在でした」

 山崎氏が選手として台頭してきた80年代前半、チームには山本浩二、衣笠祥雄の大看板がいた。そして91年の優勝のときは、自身が中心となりチームを牽引した。しかし山崎氏は、新井のような立ち位置ではなかったという。

「僕は、言葉よりも背中で見せるタイプだったように思う。昔は、山本浩二さんたちのときもそうだったけど、中心選手と若手の間に距離がありました。だから、今の新井と若手たちの距離感を見ているとちょっとうらやましい(笑)。そのムードのよさが、戦いに出ています」

 当時と空気は違っても、ベテランと若手の融合が強さの条件であることは間違いない。

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