「剛」の岡田明丈と「柔」の横山弘樹。2人が埋めるマエケンの穴 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 しかし社会人時代、都市対抗の大舞台ではいつも140キロ前半をコンスタントにマークして、ここ一番の場面では140キロ後半を出していた。“夏”に照準を合わせて練習してきた社会人出身者は、チームに疲れの漂う夏場に強く、プロの世界ではありがたく頼もしい存在だ。

 実戦のマウンドに立って、初めて力を発揮する投手。横山はまさにそういうタイプ。3月3日の中日とのオープン戦では、リリーフとしてマウンドに上がり、4イニングを4安打1失点にしのいだ。

 奪った12のアウトのうち8つをフライで打ち取った“結果”が、横山の特長を証明している。打者に気づかれないようにボールを動かして、タイミングを微妙に外しながら打ち損じを誘う。「なぜ……?」と打ち取られた打者は理由がわからないから、次も同じようにやられてしまう。いざというとき、頼りになるのはこういう変幻自在の“だまし屋”なのかもしれない。

 その中日戦で先発したのが、岡田だった。こちらも3イニングを投げ、1安打無失点の好投を見せた。

 だが、キャンプのブルペンで見た岡田は、低めのゾーンを気持ち良さそうに集めていた横山とは対照的に、大学時代のような自信に満ちた決然とした腕の振りが、なりを潜めていた。

 1球投げては考え、また1球投げたら考える。考えること自体悪いことではないが、考えすぎは“迷い”となり、投球テンポを狂わせてしまう。ボールの結果を早く確かめたいのか、左足を踏み込んだ瞬間、もう右足が跳ね上がり、とても急いで投げているように見える。ボールを早く離してしまうからリリースポイントが高く、捕手のマスクより上にボールが集まってしまう。

「考え込んでいるね。いきなりやられたからね……」

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